小学1年生の算数で超重要な「繰り下がりのない引き算」を分析する

 

こんにちは。フルタ(@Furuta_Jamaica)です。

 

僕は今ジャマイカの一年生に引き算を教えています。

ジャマイカではほとんどの子どもが引き算を指を使って学びます。

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観察しているうちに、同じ指を使った計算でも個人の習熟に差があること、そして習熟の早い子は一貫したルールを持って指を使っていることが分かってきました。

 

というわけで今日は、指を使った引き算の計算のやり方を徹底分析してみたいと思います。

 

【復習】足し算の指の使い方

以前、足し算での指の使い方はこちらの記事でまとめました

途上国の算数教育あるある”数え足し”をジャマイカで徹底分析してみました

 

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大人にはただの繰り上がりのない足し算で同じに見えるものが、子どもたちからすると違った計算に見えることがあるんですね。

それを見落とすと、数的感覚が育っていない子は混乱してしまうかもしれません。

 

実はこれ、引き算でも同じことが言えます。

計算のタイプによって、指の正しい使い方が全然変わってくるようです。見ていきましょう。

 

繰り上がりのない引き算

一年生では繰り下がりのない引き算と繰り下がりのある引き算を学びますが、今回は繰り下がりのない引き算を見ていきたいと思います。

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繰り下がりのない引き算36種類の一覧です。0の入った引き算もとても大切な概念ですが、今回は0の入っていないものを扱います。

 

こうやってみるとすごく無機質で、大人からするとあまり違いの無いように感じます。

では、これを指の使い方の型ごとに色分けしたものを見てみましょう。

 

こちら。

 

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ほほぉ~ん。

 

指の使い方

まずは指の使い方から見ていきましょう。

ジャマイカの人は1を立てるときに、どちらかというとこのように立てることが多いです。

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小指からなのね。

 

だから3だったらこんな感じ。

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なんかイケてる。さすがレゲエの国だわ

7だったらこう。

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子どもたちもこのように5を基数にすることで、一本一本数えなくてもパッと見ただけで数字を特定できます。

 

指を使った引き算の教え方

それでは実際の指の使い方を型ごとに見ていきます。

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①5-3型

まずは表の一番上の青いエリアのこの型。一番簡単なやつ。

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 5-3なのでここから3本とります。

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残った2が答え。

ここで「1,2,3」と一本ずつ数えながら倒すのではなく、3本を量として同時にパタンと倒すことができていることが大切です。

 

②8-5型

次も子どもたちにとっては簡単。

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この8から5を取りますが、8は「5のかたまりに3がくっついたもの」ですので右の5のかたまりを取っちゃえばいいわけです。

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3が残った。

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こんな風に、5の方の手を隠しちゃってもいいですね。あくまで5回指を倒すのではなく「5のかたまりを取っちゃう」イメージで。

 

③8-3型

今度は逆に5のかたまりにくっついてるハンパな数たちを取っちゃうタイプです。

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8からハンパな3を取っちゃいます。

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もしくは、3の方を隠しちゃおう。

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5のかたまりが残りましたね。簡単簡単!

 

④8-2型

③では引く数がハンパな部分の数と一致してましたが、今度はハンパからいくつかを取ります。

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8から2を取ります。左のハンパな3から2を取りましょう。これもパタンと一度でね。

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6が残った。つまり8-2といっても実際にやっていることは「3-2」でそれに5のかたまりがくっついているだけなんですね。

 

⑤8-4型

ここから少し厄介。

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ここに8がありますが、もしあなたが4を取るなら左と右のどちらから取りますか?

実際に子どもを見ていても、両方のタイプの子がいます。

 

ただ、ここでは僕たちは右手の5のかたまりから取った方が便利だよ、と指導しました。

実際にやってみましょう。右の5のかたまりから4取ると

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4本残りました。子どもたちもこれは4本だと瞬時に認識できていました。

仮にこれを左から取っていくとこうなりますね。

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左から3と右から1という形になる。どうやら、この両方から取る境目のところが子ども的にはややこしいみたいで、どうしても4回数えながら指を倒してしまうんです。

「1、2、3、もう一個、4」というように。

 

つまり結局、数え引き的な操作になってしまいやすいんですね。

これを教えていて、なんだか繰り下がりで言うところの「プチ減加法」と「プチ減減法」だなと思いました。

こう見るとやっぱり、減加法が分かりやすいのかも。

 

⑥9-6型

最後がこの型。数が大きいこともあって一番厄介なタイプ。

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9があったら、そこから6取りましょう。

6は「5のかたまりにハンパの1」ということは子どもたちは知っているので・・・

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右手の5のかたまりと左手の1本を取っちゃいました。3が残った。

数も大きいし両手から取るので一番時間がかかりました!

 

これができれば、全パターン制覇です!

 

量をイメージしながら

この指の計算を正しくできている子は、「指を数える」ことは全くしません。

 

パッと同時に指を立てられるし、パッと指を倒せる。そして、数えることなく一瞬で残った数を認識できる。

どの形がどの数を表しているのかパターンを理解していて、数の量的なイメージを持てているんだと思います。

 

これができるようになれば、少しずつ指がなくても頭の中で計算できるようになっていきます。

 

ただこれが「順序数」を指で数えているだけであれば、頭の中での計算には移行していきません。

そのため計算で指を使うことは良くないといわれることもありますが、僕は使い方によっては悪くはないんじゃないかと思っています。

 

計算ドリルも型を意識して

この型の順序に沿って学べるように計算ドリルを作りました。

①②③④まではほとんど全員の子が正しく答えることができていた。すごい!

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やはり⑤と⑥は少し難しい動きになってくるため、正答率は下がりました。

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もし、この計算の分類をせずにごちゃまぜにドリルを作っていたらどうなっていたでしょう。

 

きっと⑤と⑥が間違っていても、なぜこの計算だけが間違っているのかという深いところまで考えられることは無いと思います。

質の高いドリルやプリントを作る作業は思った以上に難しくて大変な作業なんだということが分かりました。

 

繰り上がりの引き算へ

この指を使ったやり方でやっている子どもたちは必ず「13-9」のような繰り下がりの計算でどうしたらいいかわからなくなります。

なぜなら十本しか指を持っていませんから、どうしようとなるわけです。

 

ただ、これは正しいことで、その時に新たに「減加法」「減減法」を学びます。

ジャマイカの一部の先生が教え込んでいる「数え引き」

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〇をひたすら書いて消す方法では、10の壁にぶつかることはありません。

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それゆえに、10がどんな数なのかを考える機会がないわけです。

これがジャマイカでの位取りの理解の乏しさに繋がっています。

 

10の壁にぶつかったこどもたちの面白い反応はこちらに書きました

指が十本しかないジャマイカの子どもが考えた「繰り上がり」の3つの解き方が面白かったので紹介します

 

筆算やかけ算ひき算も

これまで足し算と引き算の分類をしてきましたが、これって他の計算でも絶対に言えるはずです。

 

2桁や3桁の筆算の計算なんてたくさん分類できそうだし、かけ算割り算も生徒の正解率ごとに分類したら何か見えてきそう。

これから地道にやっていこうと思います!

 

低学年の数指導は丁寧に

日本であれば、分類なんてここまでディープに意識してやっている先生はそこまで多くないんじゃないかと思います。

 

何故かというと、正直、数感覚がある子にはこんな分類必要ないんですよね。

全部の計算を一般化して考えられる子にはごちゃまぜの計算をいきなり与えてもできちゃう。

 

ただ、ジャマイカは日本とは状況が違います。

小学生が入学してきた時点で、数字を正しく数えられない、指で自分の年齢を立てられない子も少なくありません。

家庭で数字に触れ合う機会が日本に比べて極端に少ないんです。

そういった子どもたちに対して僕は支援しているわけですから、僕のできることは全部やらなきゃいけないな。

 

もっともっと勉強しよう。そして丁寧に。精進します!

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