こんにちは。フルタ(@Furuta_Jamaica)です。
ジャマイカで小学一年生の基本的な指導を改善するためのプロジェクトをやってます。
このプロジェクトの中で考えているのは、子どもたちが「数感覚」を養いながら足し算や引き算を学んでいくこと。
その中で、ジャマイカの慣習でもある数え足しから脱却できたらいいなぁと考えています。
ただそんなこといっても、僕自身が数え足しのことを熟知していなければ当然変えようということもできないわけで。
というわけで、この1,2か月は子どもの気持ちになって指を使いながら計算をやってみて、その構造を大体把握しました。
そして気付いたのは、数え足しが全部悪いわけじゃないかも、ということ。
こどもと同じ気持ちになって、一緒に指を使いながら読んでもらえると嬉しいです!
小学校一年生の足し算とブロック
日本では、こんなようなブロックやタイルを用いて練習する一年生の足し算。
この教具を動かしながら、「合併」と「増加」という2種類の足し算を学びます。
詳しく書きました⇒「増加」と「合併」の教え方から考える足し算の順序問題
この2つの言葉がこれからたくさん出てくるので、この記事を読んでいただけたらこれからの内容がより分かる思います。
ただ、当然ジャマイカではこのような質の高い教具はありません。
そのため、子どもたちは計算するときに指を使うことが多いです。
ここでは、このように指を使いながら計算する方法を数え足しと呼ぶことにしましょう
。
例えば「8」という数字であれば、タイルを使うと
このように表せます。これを指で表すと
チキンを食べた後のギトギトの手。笑
数え足しでは、指を具体物の個数に見立てて計算をしていきます。
数え足しには型がある
子どもの数え足しを観察していると、一言に数え足しといっても計算の数字によって色々なやり方をしているということが見えてきました。
細かく見ていきます!
一年生の足し算の素過程
小学校一年生で習う足し算は主に一桁どうしの足し算がメインです。
一桁どうしの足し算を表にしてみるとこんな感じ。
左の白い部分は繰り上がりの無い足し算。
右下のクリーム色は繰り上がりのある足し算です。
繰り上がりのない足し算
繰り上がりの無い足し算の計算で子どもがどのように計算をしているかを見ていると、次のようなグループに分けられることが分かりました。
ジャマイカの子どもたちは、一桁の足し算を色ごとに少し違ったやり方でやっています。もちろん本人はそんな意識はないけどね。
色ごとのやり方を分析してみると、それぞれの良さや問題が見えてきたのでまとめてみようと思います。一緒にやってみてください!
① 2+3型
まずはこの形。2と3という両方の数が片手の指で表せる形です。
このように2本と3本を立てます。そしてその指をこんな感じで唇に当てて数えます。
「1,2,3,4,5」と5本立っている指を数えて5という答えを出します。
最初見たときはなんじゃこれと思いましたが、何かみんな一生懸命で可愛い。笑
何回も繰り返しているうちに、唇で数えなくても立っている指の数を言えるようになってきます。
足し算の種類としては、問題の状況に合わせて合併も増加も表現できる形ですね。
② 5+3型
次がこの型。この型は子どもたちにとってそんなに難しくないです。
左に5、右に3の指をパッと立てます。これを見ると、ほとんどの子が「8」とすぐに答えることができます。
8個の物は「5と3」というように、5の大きさを基準にすることで瞬時に大きさを特定できるみたいです。
これじゃすぐ「8個だ」とはわからないけど、
こうしてあげるだけで数えなくてもわかる。
人間の脳って不思議ですねぇ。
そして、この5+3型は次の7+2型の基本になる形なので、すばやく確実にできることが必要です。
この形も、合併・増加どちらの形も表現することができます。
③ 7+2型
この③のパターンがちょっと厄介な型の計算です。
7+2のように片手で数を表せない場合は、両手で計算をします。
まず、このように7本の指を立てます。
ここでパッと立てられずに、「1,2,3・・・」と一本一本立ててしまう子がいます。
7個の量をイメージできないからなのか、②の5+3型がバッチリできているにもかかわらずそうしてしまう子もいます。
そうしたら、7+2の2を追加する。
これで9になりました。
今までのタイプとちょっと違うやり方に感じませんか?
その理由は、このタイプの計算は「増加」の足し算を表しているというところにあると思っています。
今までのタイプは両方の数を同時に両方の手で表せたのに対して、このタイプは大きい方を立ててから小さい方を追加するという「増加」の足し算しか表現することができないわけです。
だから、「増加」の場面と足し算を結びつけられていない子はこのタイプの問題の正答率がガクッと下がっちゃいます。

これがまさにその話。7+3が8になっちゃう子の考えていることです。
⇒7+3が8!?簡単な足し算を間違えている生徒の共通点と思いもよらない理由
④ 4+3型
基本形の最後がこの型。
一見すると、最初の2+3型の計算に似ているような気がします。
ただ大きく違うのは、立っている指の数をどうしても数えてしまう、ということ。
①の2+3型では数えなくても指の本数を見ただけで言える子が増えてきましたが、本数が多くなってしまうこの型ではどうしても数えちゃうんです。
タイルを使えばこんな感じで、数えなくても答えが見えるんですけどね。
この型については、覚えるまで何度も何度も練習するしかなさそうです。
繰り上がりは⑤オールマイティ型
最後がこの形。オールマイティとか良さげな名前で書いてありますが、なかなか・・・なやり方で。
基本的に、このやり方はどんな計算にも使えます。だからジャマイカの子たちは繰り上がりのある計算はみんなこのやり方でやります。
例えば「9+8」
まず「ナイン」といいながら胸に手を当てる。
そしたら、次の数の「テン」からもう一方の手指を8回広げながら数を数えます。
こんな感じ。
日本人の僕たちから見るとなんじゃこりゃって感じですが、ジャマイカの高学年の子たちは上手に素早くやります。
叩き込まれてますから。
ただ、この方法の一番大きな問題は、結局このやり方では「順序としての数」しか使っていないということ。
9番目⇒10番目⇒・・・みたいに。
計算をして答えを出すことに、どれくらいの大きさなのかという量感を持つことは全く必要ありません。
ジャマイカでは数唱(数字を数えること)を何回も練習させて、その後このやり方を徹底させます。
できるんです。答えは出るんです。でも、わかってないんです。
なぜなら数字を順番でしか捉えていないから。
数字を量として捉えられず、順番でしか捉えられない子はたとえ計算ができても意外なところでつまづきます。
ちなみに、このタイプも種類としては増加の足し算を使うことになりますね。
低学年の指導の大切さ

こう見てみると①~④の計算については、そんなに悪くないように思います。
もちろんタイルを使った時のように細かな部分までは再現できませんが、モノがないジャマイカで量を見ながら足し算を教えようとなったらそうなるのはわかる。
ただ、順序数だけで答えを出す⑤の数え足しは、うーん・・・と思ってしまいます。
答えを出せたとしても、量のイメージがないために位取りや繰り上がり下がりの指導で必ず難しくなる。
個人的に、かけ算の習熟の低さもつながっているところがあるんじゃないかなと思ってます。だとすれば割り算も。
だからこそ、低学年の指導はジャマイカでめっっっちゃ大切だと感じています。
数感覚を養うための指導をもっと充実させていこう。
サクランボ計算に
これはあくまでジャマイカでの話なので、他の国で当てはまるかは分かりません。
ただ、一言に数え足しといっても、色々な型があったりそれぞれの良さや難しさなどがありました。
思ったのは、数え足しがどうこうというよりも、子どもたちが量のイメージを持ちらながら数感覚を養うための指導が必要だということを感じました。
そのためには、10までの構成をしっかり教えたり、10のかたまりを作るイメージを養っていかなきゃいけない。
こうした背景があって「さくらんぼ計算」が必要になるんだなぁ。
他の国では違うやり方してたりするのかな?
他の国の方、是非いろいろ教えてください!
引き算はこちら⇒
日本の通級指導教室で学習障害の子どもや学習の苦手な子どもの指導をしています。
納得しながら記事を読ませていただきました。計算の仕方の分析は素晴らしいです。
私も10の構成を大切にして算数を教えることは重要だと思っています。
普段の指導で使っている教材をホームページの載せています。よろしければ見てください。
http://nakao.yu-nagi.com/
中尾さん、ご連絡ありがとうございます!
教えて頂いた教材、勉強してみます。ありがとうございます!